(Time For The Moon Night)
チャート上位ランクインが長期にわたり
人の心に染み込むような名曲の誕生でした。
今回は、本ブログの真骨頂ともいえる
詳細な分析検証で、その名曲の秘密に迫ります。
キーワードは「Passionate Melancholy 激情的哀愁」
まずは曲の構成を、代表曲「MGT」と比較してみましょう。
GFriend - Me Gustas Tu MV Choreo ver.
(アクロバット振り)
いきなりサビ
A展開(ウナ⇒シンビ)
B展開(ユジュ⇒オムジ⇒ユジュ)
サビ 全員(特徴的ステップ「骨太、売りヌン」)
(サビ振り「メグスタダンス」)ストリングスなし
A展開(ソウォン⇒オムジ)
B展開(ユジュ⇒ウナ⇒ユジュ)
サビ 全員
ブリッジ(オムジ⇒イェリン⇒ウナ)
(大ジャンプ)エレキギターのソロ
ユジュHigh Noteシャウト
サビラスト
(サビ振りイェリンリード)ストリングスなし
[MV] GFRIEND(여자친구) _ Time for the moon night(밤)
短調 いきなりサビA(ウナ独唱)
(ムーンナイト立体輪舞)
長調 A展開(イェリン⇒シンビ)
長調 B展開(オムジ⇒ユジュ⇒シンビ)
転調部分 (ソウォン⇒イェリン)
短調 サビA (ウナ⇒ユジュ⇒イェリン)
短調 サビB (全員⇒ユジュ⇒シンビ)♪バム バムバムバムメ〜
長調 C展開(ウナ⇒オムジ)
転調部分 (イェリン⇒ソウォン)
短調 サビA (ユジュ⇒ウナ⇒シンビ)
短調 ブリッジ(イェリン⇒オムジ)
短調 ユジュHigh Notes シャウト
短調 サビAラスト(ユジュ+ウナ⇒シンビ⇒ウナ)
短調 サビBラスト(全員⇒ソウォン)♪バム バムバムバムメ〜
(ムーンナイト立体輪舞)
転調部分の美しさ
曲発表の時に、本ブログでも記事にしましたが、
今回の大きな特徴は、曲中で旋律が見事に「転調する美しさ」です。
ウナ独唱のサビはいきなり物悲しい短調ですが、次の瞬間
非常に楽観的な長調部分が展開します。
これは以前の傑作曲「Gone With The Wind」でもあったもので
一見、夢みる少女風の明るい展開があっても、
結局は物悲しい短調へ回帰していく・・・・
(ShowChampion EP.194) GFRIEND - Gone with the Wind
「喪失感を乗りこえて強く生きようとする少女。しかし、その心の傷は
決して癒えることがない。」という厳しい(Rough)世界観に基づいた
ヨジャチング特有の作風があります。
長調部分が、短調部分を対照的に際立たせ、巧みに盛り上げていきます。
変化に富んだ曲構成
いきなりサビという点で、ヨチンの代表曲MGTの構成に近いですが、
A展開、B展開が正確に2回繰り返されるMGTと違って
今回は、前半と後半の長調部分が異なっており後半はC展開となります。
また、サビ展開も2回目は前半のみでサビBの代わりに、ブリッジと巧みに融合し、ユジュの高音部を盛り上げます。
従来の構成をとらない自由な展開が、曲の広がりを増し、そして短調に集約していく力強さと、強烈な悲壮感へと繋がっていくのです。
今回の新しいコンセプトとして「Passionate Melancholy 격정 아련=激情的哀愁」(注釈01)という言葉がメディアに上がっていますが、上手い命名だと思います。パワー清純が更に進化して、繊細な精神性にまで高まっているのを感じます。
激情的哀愁とは、短調にとどまった静的哀愁ではなく、長調から短調へ一気に加速していく動的哀愁であり、そこには魂を揺さぶる激しさがあるのです。
参考情報源⇒韓国語記事(注釈02)
ストリングス(弦楽器)中心の伴奏
ヨチンの曲の特徴として、ストリングスを中心とした清楚な曲調に、
重低音のエレキギターを敢えて展開することで、重量感と力強さを加えていることがあります。それが、ヨチンの清楚で純真なイメージに、振り付けの力強さを対照的に際立たせ、他の誰も真似できない「パワー清純」を特徴づけるのです。
ところが今回は、その重低音のエレキギターを極力排し、クラシック音楽風のストリングス(弦楽器)を中心にして全面に押し出しているのが特徴です。一見、重量感に欠けるようですが、実は、それがユジュの澄んだ高温の歌声を、曲全編で印象付け、究極の哀愁感を盛り上げているのです。また、伴奏が一定している分、メンバーの歌声の個性が非常に際立つのも効果的です。
物悲しい歌詞の意味するもの
「밤」の歌詞の日本語訳の一部を書き出してみます。

揺れてる星の光が輝いているのに
あなたはどこを見ているの?
今すぐに消えてしまいそう
近づこうにも あなたの気持ちが分からないの
ためらうけど ここにはいられない
好きになり過ぎた 私の気持ちが見えなくなる
もう何日も泣いている
あなたはどこへ向かってるの?
今すぐにでも付いていきたいけど
待っていた瞬間の今日が 過ぎ去り
どこまでもあなたを追いかけた夜
手の届かない あなたに会いたい夜、夜、夜
夜の空を飛ぶの
As time for the moon night
夢の中であなたと会う
何と物悲しい歌詞でしょう。
聴けば聴くほど、そこには喪失感と絶望しかありません。
にもかかわらず、ヨジャチングの歌声は、
生き生きとして心に迫ってきます。

あなたは私の生きがいだった。
毎週土曜日にあなたに会えるのが楽しみだった。
あなたが帰った後も
午後の陽射しは、楽しいひと時の余韻を湛え
いつまでも輝いていた。
あなたとの会話の何と楽しかったことだろう。
生きる励みになった。いつも心の中の純真な自分がときめいていた。
どんなに辛いことも耐えることが出来た。
そして・・・・

今、あなたは永遠に去って行った。
土曜の午後の陽射しは相変わらず黄金色だが
あなたがいない今、寂しく悲しい色でしかない。
あらゆる瞬間、午後の陽射しを見るたびに
楽しかった日を思い出す。甘い追憶に浸っていたいが
もう会えないという現実が、自分を苛む。
早く忘れてしまおう。でもそれは辛い。
いつまでも追憶を追いかけていたいが、それも辛い。
何をしても辛いのだ。
曇った風景も、夕陽に照らされた部屋も
痛烈に感じるのが、もうあの人はいないということ。
あんなにも大好きだったのに。
あんなにも大切な人だったのに。
あんなにも理想の人だったのに。

この喪失感をどうすればいい・・・・
朝起きると同時に、胸が締め付けられるようになる。
胸の中が焼けただれたようになって、しくしくと痛む。
あの人にはもう会えない・・・・
こんな苦しみがこれからの人生、延々と続いていくなんて。
考えただけでもゾッとする。
人によっては、それに耐えられず、命を絶ってしまう者もいる。
喪失感を歌った詩、小説、そして映画は数多くあります。
どのようにして克服していくのでしょう。
ここで、ヨジャチングの「밤」の歌詞に耳を傾けると、そのヒントが
見えてくるのです。
歌詞には、恐ろしいほどに何の希望もありません。
しかし、ヨジャチングは生き生きと歌い続ける。
決してやめることはありません。
厳しい世界観だからこそ強くなれる心
そして喪失感の克服

喪失感の克服とは・・・・
失われた大切な人を、弛まず思い続けることの中にこそある。
何があっても帰ってくることはない、会える明日はないことを知りつつも、思い続けないわけにはいかない。
あなたに出会えたことだけで幸運だ。
あなたに出会えたことをこれからの人生の糧にしよう。
あなたなら、こんな時どうしたろう。
どんな助言をくれたろう。
こうしたら微笑んでくれますか。嬉しそうにしてくれますか。
自分を少しでも向上することを考えよう。
そして新たな出会いがあった時、その人の瞳の中に
去って行ったあの人の瞳の輝きを見出すことが出来るかもしれない。
その時、絶望の喪失感は過去のものとなるだろう・・・・
ヨジャチングの歌の世界観には一切の楽観的な甘えはありません。
厳しい現実を正面から受け止めることで、激しい哀愁を美しく輝かせ
そして、喪失感への克服へとつないでくれるのです。
そんなところが、アイドルファンではないK-POPファン、あるいは世界の一般音楽ファン、クラシック音楽ファン・・・・すべての人々の心を捉えずにはいられないのです。

少女のころ、
告白された男の子に、初恋の思いを抱き続けていたのに、実は「二股掛けられていた」ことを知り、幼い胸を痛めたソウォン(実話です)

ほんの少しのタイミングで、好きな男の子に告白する最後のチャンスを逃してしまった。それ以来、思い出の停留所を通るたび、寂しい表情で想いを巡らすイェリン(実話です)
メンバーの心に秘めた甘酸っぱい恋愛の記憶が、ヨジャチングの歌の世界観に少なからず影響を与えているのも、重要な点ですね。
ヨチンの歌は、まさしくメンバーたちの心の叫びでもあるのです。
以上、ヨジャチングの大ヒット曲「밤 Bam」の分析検証でした。\(^o^)/
註釈01
「아련」は単独では「おぼろげな」「ほのかな」という意味ですが、
「격정 아련」となると「哀れな」「悲壮感のある」となります。
註釈02
記事の部分訳です。
'격정 아련'이라는 새로운 컨셉트에 맞춘 퍼포먼스가 큰 인기를 끌기 시작했고 지난주 5개 순위 프로그램에서 몽땅 1위를 휩쓸었다.
「激情的哀愁」という新しいコンセプトに合わせたパフォーマンスが大きな人気を集め始めた。先週5つのチャートですべて1位を総なめにした。
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